2022 You Know Them,But You Don't Know Them
椅子に使用した絹糸はカイコガの繭が原料で、5000年以上前から人々の暮らしと関わり続け、現在まで多くの遺伝子組み換えが行われてきた。
無数のカイコガは遺伝子組み換えによって出来た個体として表現している。通常、ものを使用しているとき、そのものの歴史や生産背景について、ほとんど考えることはない。私たちはこの椅子に座ってしまえば、椅子の遺伝子組み換えされたカイコガを見ることはできない。
また、緯糸に使用している再帰性反射素材は注意喚起の為に用いられる素材である。使っている時は危機のサインに気づくこともなく、問題について考えることもないということをこの作品は体現している。
ヨーロッパでは年代を経た椅子の布を張り替えて何十年も使い続ける。新しい製品を生産し続けるのではなく、修理して大切に使う文化に共感し、作品に用いた。